2010年5月31日月曜日

MBAは現代版Grand Tour

最近読み終えた安藤忠雄さんの"連戦連敗"という著書の中に出てきた単語、"Grand Tour"。同書から言葉の意味を抜粋すると、

"17-18世紀のイギリスで、貴族の子弟がフランスやイタリアなどのヨーロッパ大陸を若い頃に放浪した、その習慣の呼称です。10代後半に出発し、短くて1-2年、長ければ5-6年をかけて欧州を歩き、幅広い教養を身につけて帰ってくる。この旅の目的も、帰するところは彼らの自立心の育成にあったのだと思います。"

ということで、自立的・自律的な精神を培う一人旅とでも言えましょうか。

翻って現代日本人の場合、10代にこのような旅を経験することは稀で、基本的には高校卒業後に大学入学、大学卒業後に就職、その後30歳を迎える、というパターンがほとんどです。

本を読みながらふと、MBAとその2年間は、その人の取り組み方次第では、現代の"Grand Tour"になり得るなと思いました。

連戦連敗にも書かれていますが(以下引用)、
"建築史に登場するようなすぐれた建築家は皆、若いときにこうした旅を行っています。そして多くの場合、この旅の過程での発見と思考の時間が、その後の建築家としての展開と生き方に深く関わっている"
この、建築という言葉をビジネスと読み替えてみると、旅は何に置き換わるのか。

大学卒業後、日系証券会社でM&A業務を、その後転職してプライベートエクィティ業務を経験し、ある意味ブロックを積み上げるようなキャリアを経てきた私にとっては、こうしたGrand Tour的な位置付けとしてのMBAプログラムと2年間の日々は、今までの価値観を見直す、新しい価値観に遭遇するための充実した期間になっています(残り1年もそうなることを期待します)。

尚、昔のGrand TourとMBAを比較してみると、
- MBAでは、学ぶべき対象は必ずしもヨーロッパではない。現在、また今後のビジネスの中心になるであろう、アジア・南米・アフリカについても、思想や歴史の宝庫であり、それらを理解することはビジネス上も活きてくる(特にアジアについてはそれが言える気がします)
- MBAでは、必ずしも"孤独な"経験が重要視される訳ではない。世界中から集まった優秀な人々からの学びは大きい
- 情報へのアクセスが格段に向上した現在であっても、自分が実際に体験・経験することが重要と言う意味において、MBAの2年という時間は短縮されるべきではなく、むしろ適切な長さではないか

MBAへの留学を考える際、留学することによるopportunity loss(経済的、経験的、社内昇進的)を考えがちですが(私もそうでした)、自分が今からチャレンジするのは自分自身を磨き、残りのビジネスパーソンとしての人生に自立的に取り組むための"Grand Tour"なのだと位置づければ、すっと納得できるような気がします。

2 件のコメント:

  1. 永見さん、MBAは現代版Grand Tourを興味深く拝読しました。自分も安藤氏の著作持っていたりして(笑)。Grand Tourは遅咲きの米建築家ルイス・カーンの項の記述ですね。広義では"欧州への古典建築歴訪の旅"ともあります。
    実は週末からミラノとローマに行きます。建築、美術、教会、音楽といろいろと触れて来たいと思っています。50歳で自身の向かうべき方向が定まっていなかったカーンが転機を迎えたGrand Tourのように、私にとっても有意義なGrand Tourとなるようにしたいと思っています。 石川

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  2. New Daddy in Wharton2010年6月9日 23:17

    石川さん

    コメント有難うございますー!
    今の季節のイタリアは最高だと思いますので、是非楽しんできて下さい!
    ローマには、確か去年くらいに出来たザハ・ハディドの21世紀美術館があったと思うので、お時間あったら是非行ってみて下さいー

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